デジタルの世界は息を呑むようなペースで発展し、 膨大な量のデータを処理する電子機器はますますパワフルになっています。 しかし、コンポーネントの高密度化と単位時間当たりの電力量(パワースループット)の増加により、通信と自動化の両方で冷却が課題になりつつあります。 コンパクトなソリューションが求められており、ノイズ保護の要件に準拠する必要もあるため、より強力なファンを設置したり、ファンの数を増やしたりすることはほとんど不可能となっています。 ebm‑papstの新しいコンパクトファンは、従来ファンよりも最大50%高い空気性能を実現し、また同じ空気性能の同サイズのファンよりも騒音値が小さくなり、将来を見据えた製品となっています。 よりパワフルな電子機器をこれまでのファンと同等の騒音レベルで冷却できます。
今日、電子機器の冷却は、主に軸流コンパクトファンで行われています。これはファンの構造原理により電子機器への装着が容易で、多くの空気流量を供給できるためです。 ただし、軸流コンパクトファンには限界があります。たとえば通信システムやデータセンターの様に、これまで以上にパワフルな電子機器がこれまでと同じスペースに収容されるために、ファンの更なるコンパクト化が求められる場合です。
冷却能力を高めるために2つの軸流コンパクトファンを直列に設置しますが、通常は逆回転ローターを使用して実現されます。 この種の2段ファン設計では原理的に圧力を高くする事ができますが、システムの騒音レベルも大幅に高くなります。 これは、NEBS(ネットワーク機器構築システム)、OSHA(労働安全衛生局)、ANSI(米国規格協会)、ETSI(欧州電気通信標準化機構)などのノイズ保護の基準とガイドラインを満たしていないことを意味します。 追加のノイズ低減装置は、スペースを多く必要とされコストが高くなるために通常はオプションとなり得ません。
説得力のあるソリューションのための新しい開発アプローチ
そのためebm‑papstの技術者達は、大きな音を出さずより高い送風能力を実現し、かつコンパクトなファンを開発するための新しいアプローチを選択しました。 Mulfingen、St.Georgen、Shanghaiの各工場から専門知識が結集されました。 大手電子機器メーカーとの緊密な協議により、従来の2段式ソリューションと同寸法で、あらゆる点で今後の電子機器冷却の要求を満たすことができる新しいコンパクトファンであるDiaForce(図1)が開発されました。
新開発の背景にあるコンセプトは説得力がありますが、DiaForceの秘密はそのインペラーとハウジングのユニークな形状にあります。 これにより、エッジ領域の乱流が最小限に抑えられ、ノイズが大幅に減少します。 ファンインペラの出口開口部も、吸気開口部よりも大きくなっています。 これは、空気がファンの軸方向と半径方向の両方に流れることを意味し、高い圧力上昇を可能となります(図2)。 したがって、DiaForceは、軸流ファンと遠心ファンの中間にあるという特徴があり、軸流ファンのもつ安価な設置という基本的なデザインも残しています。 空気力学に関する特に優位な点は、DiaForceがディップのない空気性能曲線を示すことです。 同時に、空気力学での最適化により、この出力密度で最も静かなファンになりました(図3a、b、c)。
このコンパクトファンは、従来の軸流コンパクトファンよりも最大6 dB(A)低い騒音値を示し、最大50%高い空気性能を備えています。 電子機器を冷却するファンは実際には部分負荷で運用されることが多いため、通常の動作ではより高い空気性能は必要とされないことがよくあります。 ただし、通常の動作条件以外でも電子機器が十分に機能し続けるためには、十分な余力(パワー)を残しておく事が不可欠です。 たとえば、部屋のエアコンが故障して周囲温度が上昇している場合、必要に応じてファンを高速化するための十分な余力が必要です。
パワフルでインテリジェントなDCモーター
開発技術者達はまた、モータリゼーションに対し重要な一歩を踏み出しました。 コンパクトファンの背後にある原動力は、500 Wのモーター出力を備えた3-core External Rotor Motor ( EC Motor Brushless)のエネルギー効率の高いDCモーターです。モーターデザインは非常にコンパクトで、高効率で動作します。 新開発された500Wのモーターには、インテリジェントなモーター制御の中心となるパワフルなマイクロコントローラーに提供できる機能がたくさんあります。殆ど全ての負荷範囲で最大トルクが可能になり、最適な効率とノイズに対する最適な構造を提供する事が出来ました。 統合されたローターロック保護により、安全性が確保されます。 設定可能な制御入力とさまざまなオプションの出力信号が、インターフェースとして利用できます。 実用的なオプションには、信号のgo/no goアラーム、速度制限付きのアラーム、および内部または外部の温度センサーが含まれます。 DiaForceは、120x120x86mmのサイズを実現しました。
ファンチェック(FanCheck)によるインテリジェント・メンテナンスの概念
オプションのファンチェック(FanCheck)機能を使用すると、インテリジェント・メンテナンス(≒予知保全)の機能を活用することもできます。通常、ファンは故障すると予期せずして交換が必要となります。データセンターやモバイル通信基地局など可用性要件の高い電子機器を冷却するファンの場合は、非常に迅速に交換する必要があります。あるサービスコンセプトでは、故障が発生した場合、システム内のすべてのファンを交換する必要があることも規定しています。この場合、材料費とサービス技術者が現場に出向かなければならないので、多くの場合では多額の出費につながります。 ebm‑papstのファンチェック(FanCheck)機能はこの問題を解決します。実際の運転条件に基づいて動作中のファンの統計的耐用年数を継続的に計算します。これにより、交換プロセスを費用対効果の高い方法で計画でき、交換コストを削減できます。さらにファンの可用性が向上します。お客様はファンの状態情報または警告を提供されるタイミングと方法を指定できます。残りの耐用年数を綿密に監視したり、残りの耐用年数が以前に設定された値を下回ったときを単純なアラームのトリガーにしたりできます。このファンチェック(FanCheck)を、既存の制御システムに簡単に統合できます。これは、GreenIntelligence(グリーンインテリジェンス)が提案しているように、将来の情報通信技術に要求される「インテリジェント」かつ「高性能な電子機器の冷却」に、妨げるものは何もないことを意味します。
グリーンインテリジェンス
適切なモーターまたはファンを選択する場合、重要なのはエネルギー効率やパフォマンス値などの製品特性だけでなく、実装されているインテリジェンスおよび通信オプションが重要です。換気および駆動技術のためのGreenIntelligenceソリューション例には、内部および外部センサーを使用したデータ取得、データ処理、高性能モーター制御システムのインテリジェントな調整、およびシステムをネットワークに統合するためのオプションが含まれます。状態監視のおかげでユーザーは、いつでもシステムの操作パラメーターを監視できそして操作履歴が保存されているので、より優れたエラー分析と最適化を実行できます。需要に基づく予測で運用する事により運転時間を長くできることになり、エネルギー消費とノイズ発生を最小限に抑えられ、さまざまな動作条件でも自立調整が可能となります。予知保全により、必要に応じたサース作業計画ができるため、少ないダウンタイムでサービス間隔はより長くなり、そして高可用性を実現できます。